大阪市中央卸売市場で仲卸業を営む株式会社泉州屋は、1964年創業、4月より63期を迎える老舗の企業です。近年、青果の取り扱いだけでなく、加工業や果樹の生産まで幅広く事業を拡大しています。事業拡大の狙いはどのようなところにあるのか、2025年に代表取締役に就任された小山社長にお話を伺いました。
年間供給が難しい果実を冷凍加工、生産物を余すことなく食品製造までタッチ
泉州屋は青果の仲卸が事業の中心ですが、国内の果樹生産は年々減少傾向が進み、今後数年でさらに生産量が減少すれば、市場には取扱量がますます逼迫していくという危機感があります。
そのような背景の中、2017年、泉州屋では「泉州屋ラボ」を東部市場内に開設、凍結加工事業をスタートしました。果実の品質劣化を最小限に抑えることで、用途の汎用性を高める「急速冷凍機」を配置、冷凍加工は、果物の「一番おいしい時期」に冷凍保管ができることがメリットとなります。また、規格外商品など廃棄されてしまう果実を冷凍カット加工やピューレ加工することにより、「食品ロス削減」にも繋がります。果樹市場の逼迫に備え、生産者との密な関係を築き、A品からC品までもれなく果実を買い取れる体制を準備しています。


消費者の購買動向として、果実は「嗜好品」に当たります。同じく製菓も「嗜好品」に分類されることから、長年「スイーツは果物のライバル」という固定観念があったと言いますが、製菓原料卸の会社と知り合い、果実は製菓にとって必須とも言える材料である事を知りました。発想の転換で、カットフルーツ、冷凍加工やピューレ加工等は材料供給という販路につながるとして、製菓の一次加工の受託を開始した他、委託された果実を材料に製菓を製造する食品OEM生産受託事業を手掛けることも進めています。
今後国内の果樹農業が、担い手減少の影響で大規模化、省力化が進む事を予想しており、その際の用途、販路の一役を担うべく体制を整えています。その上で生産グループとの連携を模索し、コンソーシアムを形成することも見込んで事業展開を進める計画です。
農業生産法人 株式会社あけのフルーツをグループに迎える
2021年、泉州屋は沖縄県でマンゴーを生産する農業生産法人 株式会社あけのフルーツをグループに迎えました。あけのフルーツの創業者は、かつて「今帰仁村を日本一のフルーツの村にする」という志を持ち、沖縄で初めてマンゴー生産を手がけたメンバーの一人です。それから30年余りが経ち、生産技術に強みはありましたが、マンゴーの改植時期を迎え、自身も高齢となったこともあり、第3者への事業継承を考えるようになりました。県内リゾートホテルなど様々な業種に当たってみたものの、相手とのニーズにギャップを感じていたと言います。確かな栽培技術を持つ一方で、生産のその先、販売に強みを持つ相手と組むことで事業を継続できないかと模索している中で泉州屋と出会いました。


泉州屋は初めての面談で圃場に赴き、圃場の管理が行き届いていることを確認、あけのフルーツで働くスタッフのマンゴー作りへの熱意を感じました。あけのフルーツは一次産業のプロ。一方で泉州屋は仲卸業として販売、流通に強みを持ちます。自社の戦略に当てはめて考え、具体的にどのようなシナジーが生み出せそうか想像ができました。「特に現社長である創業者の息子さんは、金融機関に勤めていたという事もあり、泉州屋の戦略を素早く理解された。きわめて優秀な経営者だなというのが第一印象だった」と振り返ります。
「餅は餅屋に」。生産と販売の役割分担で地域農業を守る。
マンゴーは「表年」「裏年」で生産量に差があり、あけのフルーツでも安定した農園経営に難しさを抱えていました。現在は経営管理、流通販売面等のバックヤードは泉州屋が全面支援をしています。安定的な給与体系が社員のモチベーション向上、後継者育成につながり、あけのフルーツはマンゴー生産に注力してもらうことができています。農園のメンバーは以前と変わらずそのまま生産に携わり、生産リーダーをあけのフルーツの圃場の責任者としていることが、地域に対しての安心感にもつながっています。泉州屋グループとなった当初はマンゴーの改植中で、生産量が2019年は3.6t/年と減少していましたが、2021年は6t/年までに回復しました。2027年には12t/年の収穫量を見込んでいます。

現在、あけのフルーツの栽培品種は、国内で一般的なアップルマンゴーが9割ですが、今後の生産のために「金蜜」「キーツ」等、25品種のマンゴーの栽培にも取り組んでいます。また、今年は高い生産技術を示すため、1本の大きな木から1,000個のマンゴーを収穫する「千成マンゴー」にも挑戦しており、グループをあげてこの企画をバックアップしています。
さらに、今帰仁村周辺にはマンゴーだけでなく、スイカ等の名産物もあり、あけのフルーツを拠点に、そういった周辺の農作物を集めていく計画です。



泉州屋の本業は仲卸業であり、生産技術はそれぞれの産地に根付いています。泉州屋の役割は、地域の果樹産地を支える生産者を絶やすことがないよう、生産地、生産グループと連携し、物流、卸業を担い、効率的に加工業者、消費者に届けること。「生産者には作物を育てることに集中してほしい。モノを売るのは自分達の仕事」と語る小山社長。単なる売り手と買い手の関係から、共に地域農業を支え育てていく関係へ。泉州屋の挑戦は続きます。
基本情報
会社名:株式会社泉州屋
泉州屋所在地:大阪府大阪市東住吉区今林1-2-68 大阪市中央卸売市場東部市場内
農業生産法人 株式会社あけのフルーツ所在地:沖縄県国頭郡今帰仁村字天底887
栽培品目:マンゴー
圃場面積/生産量:0.6ha/年間約10t
<小山 浩氏 プロフィール>
株式会社泉州屋 代表取締役社長
1995年(平成7年)入社。仲卸業一筋30年。
物流担当、国産果実、野菜の仕入・販売担当を経て、グループ内の営業全般・物流全般を管掌。
水産品の営業にも関わる。2025年(令和7年)6月に代表取締役就任。


