岡山市で約6ヘクタールのぶどうと1.3ヘクタールのいちごを栽培し、観光農園、直売所、古民家カフェも運営する株式会社岡山フルーツ農園。代表の高原弘雅さんは、ギフト用中心になりがちな国内の果樹生産を見直し、日常用や加工用まで用途ごとに圃場と栽培方法を分けています。大区画化や機械化、低コスト施設、生産者とパックセンターが連携した販売体制から、安定して収入を得られる果樹経営の考え方を伺いました。

100万円を元手に始めたぶどう栽培

高原さんの実家は農家ではありません。2006年に岡山大学農学部を卒業すると、100万円を元手にぶどう栽培で就農しました。当初はぶどうだけを生産していましたが、2010年の法人化に合わせていちご栽培も始めました。

2012年に観光いちご園、2016年に農産物直売所と観光ぶどう園を開設。2019年には、いちごとぶどうに対応するパックセンターを共同で稼働させ、2023年には古民家カフェHanareを開きました。現在は生産から販売、観光、飲食までを手がけています。

栽培面積は、ぶどう約6ヘクタール、いちご1.3ヘクタール、その他の露地野菜0.5ヘクタールです。正社員8人、パートとアルバイト30人に加え、就労継続支援B型事業所へ施設外就労として約10人分の作業を委託しています。国内でも大規模な生食用ぶどうの経営ですが、ぶどうの栽培管理は常駐3人で行っています。

ぶどう農場

安定して収入を得る農業を目指す

高原さんが掲げる言葉は「儲かる農業ではなく稼げる農業」です。相場による単価の変動や、天候による収量と品質のばらつきに左右される経営から抜け出し、計画的な投資と栽培管理によって、安定した品質と収量を確保することを目指しています。

ぶどうといちごを組み合わせているのも、年間の売上を安定させるためです。一時的に大きな利益を得ることよりも、需要を見通し、必要な量を計画的に生産し、継続的に収入を得られる経営を重視しています。

ハレフルとケフルをともに届ける

岡山フルーツ農園では、贈答品など特別な日に食べる高級果物を「ハレフル」、日々の食卓で食べる果物を「ケフル」と呼んでいます。国内の果樹生産はハレフルの割合が高い一方、手頃な価格の果物は輸入品が中心になりつつあります。国内生産が縮小し、果樹園の廃園も増えています。

高原さんは、日常的に国産果物を食べてもらうには、ハレフルとケフルの両方を生産する必要があると考えています。ギフト用だけでなく、普段使い用、果汁用、ピュレ用、レーズン用など、用途ごとの需要に合う果物をつくることが、国内の果樹生産を維持する道につながります。

用途ごとに圃場と栽培方法を分ける

国内では、ぶどうの栽培方法といえばギフト用の栽培方法が基準になっています。しかし、ギフト用、生食用、果汁用、ピュレ用では、求められる品質が異なります。岡山フルーツ農園は、用途ごとに圃場を分け、栽培方法も変えています。

土づくりは共通ですが、生産技術、剪定の仕立て方、ホルモン処理などは用途に合わせます。ギフト用ぶどうの規格外品を加工に回す方法ではありません。加工品としての価値を発揮できる原料を、最初から加工用途に合う方法で育てます。

例えば、ギフト用のぶどうは水分量、粒の大きさ、柔らかさなどを重視します。そのぶどうを乾燥させても、必ずしもおいしいレーズンにはなりません。レーズン用は粒を小さく育て、乾燥後に味がしっかり残るように栽培します。粒を間引かずに生産できるため、管理作業も減らせます。

用途別の栽培体系を整えることで、加工用ぶどうはギフト用の約10分の1の作業時間で管理できるといいます。商品の品質と生産効率を同時に考えることが、大規模化の前提になっています。

大区画化で機械が働ける果樹園をつくる

作業時間を減らせる栽培体系ができると、次に必要になるのが、その方法に合う圃場です。機械が入りやすく、事故が起こりにくい大区画へ整備することで、少人数でも管理できる面積を広げられます。

岡山フルーツ農園では、傾斜地にある10枚の田畑をつなぎ、約70アールの緩やかな斜面へ整備した例があります。水路を暗渠化し、圃場を一体化した上で緩い傾斜をつけると、水はけがよくなり、果樹の品質も管理しやすくなります。

高原さんは、廃園が増える状況のなかで、まず守るべきなのは作りやすい圃場だと考えています。果樹園には機械を導入しにくいといわれますが、棚の構造を工夫し、支柱の数を減らせば、マニアスプレッダー、コンポキャスター、トラクターなど、土地利用型農業で使われている機械を活用できます。

区画整備前の段々になった圃場
マニアスプレッダー1.8t

自力施工できる低コストハウス

施設資材と人件費の上昇により、果樹用ハウスの整備費は高くなっています。そこで岡山フルーツ農園は、構造を単純にし、自力で施工できる低コストハウスを開発しました。

設計上の強度を超える強風が吹いた場合は、被覆フィルムが裂けることで力を逃がします。ハウス本体へ過度な強度を持たせる必要がなくなり、資材点数を減らせます。構造が単純になるため、天井を高くしながら施工費を抑えることも可能になりました。

柱が少ないハウスでは、既存の農業機械を施設内へ入れやすくなります。用途別の栽培体系、大区画化、施設の単純化、機械導入を一体で考えることで、少人数による土地利用型の果樹経営を進めています。

自力施工のハウス

生産者とパックセンターの連携

岡山フルーツ農園は栽培を経営の中心に置くため、食品加工を手がける事業者と連携してパックセンターを整備し、生産と販売を一つの体系で運営しています。農園から独立したぶどう農家3件、いちご農家2件とも協力して生産しています。

パックセンターと生産者は、長期的な需要をもとに生産計画を立て、ギフト用、普段使い用、加工用の生産量を決めます。買い取り単価も事前に定額で設定します。販売先と数量、価格を見通せるため、生産者は必要な面積と管理作業を計画できます。

国内の需要量は、ギフト用より普段使い用、さらに加工用の方が大きいのが現状です。その需要構成に合わせて作付面積を増やし、必要な量を生産できれば、単価の変動を抑えながら面積を拡大できます。用途別生産は、栽培技術だけでなく、経営を安定させる仕組みでもあります。

果物の消費量・生産量バランスのイメージ

日常の果物を支える果樹経営

岡山フルーツ農園の大規模化は、同じ栽培方法を広い面積へ広げる取り組みではありません。まず市場の用途を分け、各商品に必要な品質を定め、その品質を少ない作業で安定してつくれる栽培方法を組み立てています。そのうえで、圃場や施設を機械が働きやすい形へ整えます。

この仕組みは、贈答用の高級果物とともに、日常的に食べられる国産果物や加工品の原料を安定して供給するためのものです。需要をもとに生産量と価格を決め、生産者同士が連携して供給する。高原さんが目指す「稼げる農業」は、果樹を継続して生産するための具体的な経営方法として形になっています。

基本情報

会社名:株式会社岡山フルーツ農園

所在地:岡山県岡山市北区本町10-22 本町ビル2階

栽培品目と栽培面積:ぶどう約6ha  いちご1.3ha  露地野菜0.5ha

<高原 弘雅氏 プロフィール>

株式会社岡山フルーツ農園 代表取締役。岡山市東区西大寺出身。2006年に岡山大学農学部を卒業し、ぶどう栽培で就農。2010年に株式会社岡山フルーツ農園を設立した。観光農園、直売所、パックセンター、古民家カフェへと事業を広げながら、用途別の栽培体系と土地利用型果樹経営の確立に取り組んでいる。

写真出典元「JAcom 農業協同組合新聞」