生産者の思いを引き継ぎ、生まれ変わったぶどう園
八天堂ぶどう園は、広島県竹原市小梨町の山間部にあり、オーナー不在となったぶどう園を八天堂と地域で福祉事業所を運営する宗越福祉会で引き継ぎ、2021年4月から本格的に「八天堂ぶどう園」として運営を再開。ぶどう園では現在10種類以上のぶどうを栽培しています。
竹原のぶどうについて

広島県竹原市のぶどうは1870年代から栽培されており、豊かな土壌に恵まれていることから大変甘いぶどうです。特に八天堂ぶどう園のある山間部は、水捌けもよく気温差があることにより、甘くて実の大きいぶどうが出来上がり、八天堂ぶどう園では赤、黒、青の3色のぶどうを栽培しています。
「冷やして食べるくりーむパン」で有名な八天堂がぶどうの生産に参入した背景
農業への参入には「くりーむパン」1本での事業から、経営の多角化を目指したことが背景にあります。最初に取り組んだのは、「スイーツバーガー」の開発による6次化。主力のくりーむパンと規格外のフルーツを活用することで、地域農家の課題解決に繋げる狙いもありました。
また、福祉との連携には八天堂 森光社長の個人的な想いがあります。かつて八天堂が経営難に陥った時期、福祉事業所で続けていたパン作り教室で、障害のある人たちの笑顔に心を救われた経験から、福祉への恩返しの意味も含め、2017年、木更津で竣工したくりーむパンの第2工場では地元の福祉事業所との連携をスタートさせました。
2018年ごろ「農福連携」のキーワードを知ったことがきっかけで、「福祉との連携」「6次化」といったこれまでの取り組みに加え、農業への参入を目指すようになりました。

農業参入に当たっては「株式会社八天堂ファーム」が新たに設立され、林社長が代表に就任しました。相談に行った市役所から、離農が進むぶどう園を紹介され、ぶどうであれば、既存の商品と相性が良いということもあり、農業への挑戦がスタートしました。
地域の多様な人材の活躍とコンソーシアムの設立
0.8haの自社農園から年間約7t収穫されるブドウは青果物として出荷されるとともに、1/4の規格外品は、八天堂のくりーむパン、スイーツの加工用として活用されています。果樹栽培では普段の園地管理から収穫・出荷の作業まで、宗越福祉会が支援する障害者、生活困窮者等が活躍しています。
自社のぶどう農園の生産体制としては、元農研機構職員の70歳の栽培指導者、福祉支援員1~2名、福祉事業利用者・生活困窮者等3~4名、地元採用者3~4名が日々の生産にあたります。
また、2024年8月には八天堂ファーム、宗越福祉会、東広島市で障害者支援を行うアソシエイトファームが中心となり、地元の農家や企業等、33団体が参画する「農福コンソーシアムひろしま」を立ち上げ、社会福祉事業所と近隣農家のマッチングを目指すと共に広島県、竹原市、三原市、東広島市と「農福連携による地域共生社会実現に関する協定」を締結し、地域全体で果樹園就農者の確保、園地拡充を推進しています。

既存の商流とブランド力を活かした商品開発と他フルーツの販売拡大
八天堂ファームでは、果樹の生産だけでなく、果物に商品企画・開発・製造・販路開拓を組み合わせることにより、経済的価値×社会的価値等、付加価値を生み出し、地域活性化、事業の継続化を目指しています。
例えば近年、竹原市にて生産された「大乗(おおのり)いちじく」について、八天堂ファームの商流とブランド名を使用し、広島県東広島エリアにて販売を開始しました。また、岐阜では県と地元JAと連携した新商品の開発等、コンソーシアムを通じた地域との繋がり、農福連携の活動を通じて形成した全国の生産者等との繋がりを活かした商品開発や流通拡大にも積極的です。


「果実なくりーむパン」シリーズ
課題と今後の展開
現在の課題としては、農園に灌水設備がないために、毎年の収穫量が天候に左右されるという問題があります。畑の賃借は10年契約のため、自前で灌水設備を入れるにはリスクがあり行政による支援が求められます。2025年11月に開催されたFRUIT EXHIBITIONで講演をした徳島県 菜々屋の取り組みは大変参考になると感じました。コンソーシアムと自治体が連携し、荒廃農地の情報や整備を集約し、新たな果樹栽培への参入も検討しています。
また、農福連携によってスタートしたぶどう栽培ですが、最近では福祉の力を借りても尚、人手不足が深刻です。今後は、生産現場により一層手をかけない形での展開を模索する必要があります。地元大手スーパーからPB商品用の原料提供の相談もあるため、冷蔵・冷凍設備、一次加工処理施設を整備して加工用ぶどうの栽培と6次化を拡大すると共に、地域内外の生産者や実需者との連携を強化していく意向です。
一方で、農業の生産現場の職人には、高品質のぶどうを作りたいという想いもあります。現在ビジネスモデル特許を申請中の「畑のオーナー制度」では、企業に1本のぶどうの木のオーナーとして登録してもらい、圃場を企業研修や体験の場として、収穫された高品質のぶどうを贈答品として活用してもらうサービスを展開予定です。
基本情報
会社名:株式会社八天堂ファーム
所在地:広島県三原市宮浦3-31-7
栽培品目:ぶどう
圃場面積・生産量:0.8ha・7t
<林 義之 氏 プロフィール>
(株)日本経営にて財務指導や民事再生実務に従事後、2011年に(株)八天堂入社。工場や新業態の立ち上げ責任者を歴任し、2022年に県立広島大学大学院にてMBAを取得。自身の提唱する「商工農福連携」の実装に向け(株)八天堂ファームを設立した。現在は遊休耕作地でのぶどう栽培や加工販売を通じ、全国の事業者への販路・加工支援を展開。社会福祉法人と連携し、障がい者の待遇改善と自立支援に尽力している。


