青森県鰺ヶ沢町で、りんごをはじめ、大豆や米など131.5ヘクタールを耕作する有限会社風丸農場。生産にとどまらず、加工、農作業受託、農地整備、農業体験、そして剪定枝を活用した木質バイオエネルギーまで、事業は多方向へ広がっています。その根底にあるのは、農業を次の世代へ残せる産業にすること。40年以上にわたる実践から、持続可能な地域農業の姿を追いました。
131.5ヘクタールを支える、多角的な農業
風丸農場が管理する農地は、2024年時点で総面積131.5ha。りんご24ha、その他の果樹1.5ha、大豆80ha、主食用米16ha、飼料用米10haに及びます。従業員10名に加え、農繁期には地元から15名を期間雇用し、就労継続支援B型事業所からも4〜5名を受け入れています。
事業は大きく、生産・農作業受託、農産物の加工・商品開発と販売、農業体験や農泊などの交流・観光、農地・基盤整備の四つに分かれます。目指すのは、自分たちが面白い、よいと思うことを、よりよいものづくりにつなげること。そして生産者や地域の農家、消費者が互いに作用し合う、強い関係を築くことです。

その原点は、木村才樹さんが1983年に就農した頃までさかのぼります。1997年に先代から経営を引き継ぎ、2004年に有限会社白神アグリサービスを設立。2021年には、農産物ブランドとして育ててきた「風丸」を社名に掲げ、有限会社風丸農場へと改称しました。沿革の一つひとつは、現在の多角的な経営へとつながっています。
「加工用」は、規格外という意味ではない
風丸農場は、就農から間もない1986年、青森県りんごジュース株式会社(シャイニーアップルジュース)との契約栽培を始めました。現在は27haの園地で、生果用と加工用を合わせて15品種を栽培しています。
加工用りんごは、生果として出荷できないものを回すのではありません。ジュース、プレザーブ、ジャムなど、それぞれの用途に適した品種や品質を契約先の要望に合わせて選び、熟度を管理して収穫します。用途から逆算して栽培し、品質を規格化する。複数の契約先を持つことは、販路のリスクを分散し、経営を安定させることにもつながっています。
この考え方を象徴する商品が、乾燥りんご「農家が干したりんご」です。きっかけは、2008年に青森県を襲った大規模な雹害でした。収穫直前の多くのりんごが被害を受けるなか、何とか販売につなげようと、近隣の農家にも原料を供給してもらい、冬季の仕事として加工に着手。試行錯誤の末、独特の食感と、りんご本来の風味を生かした商品が生まれました。

機械化は、園地のデザインから始まる
風丸農場が大規模な機械化を見据えたりんご園づくりを始めたのは、およそ40年前のことです。高齢化による人手不足や作業負担を見据え、農業機械を積極的に導入してきました。しかし、機械を購入するだけでは効率化は進みません。大型機械が安全に動けるよう、樹木の配置や樹形、園路まで含めて園地そのものを設計することが重要だと考えています。
海外製の収穫機械も、価格と削減できる人件費、作業量を比較し、採算性が高いと判断すれば導入します。ツリーシェーカーで実を落とし、ブロワーで園路へ寄せ、収集機で集め、メッシュパレットへ排出する。一連の工程を機械でつなぐことで、作業の効率化を図っています。


手もぎ収穫作業




機械化に合わせて整備された紅玉の園地は、樹齢の割に病害虫が少なく、視察に訪れた農家や研究者を驚かせるといいます。病害虫が発生した木は速やかに伐採・改植し、園地を更新しながら収穫量の平準化を図っています。農地・基盤整備は自社園地に限らず、近隣農家からの相談にも対応。田畑の新規整備や再整備、生産効率化のための工事に加え、定植から収穫までの生産管理についても助言しています。
剪定枝を、地域を支えるエネルギーへ
りんご栽培に欠かせない剪定では、毎年、多くの枝が発生します。風丸農場はこれを廃棄物ではなく、地域で循環させる資源として捉えました。剪定枝は破砕して木材チップに、園地整備で伐採した木は薪に加工。ボイラーや家庭用薪ストーブの燃料、土壌改良材として製品化し、販売しています。木材チップは、暗渠や農道整備の資材、堆肥の骨材としても利用します。農場内ではデンマーク製の農業用ボイラーを稼働させ、ビニールハウスで毛豆(えだまめ)を育てたり、早期収穫を試したりと、実験的な取り組みを重ねています。

枝を集める作業にも、現場発の工夫があります。木村才樹さんは27歳のとき、冬場の厳しい剪定枝回収を軽減するため、トラクター装着型の剪定枝収集レーキを開発し、2016年に特許を取得しました。集めた枝はバイオマス燃料へ。作業負担の軽減と資源循環を一つの仕組みで結んでいます。
再生可能エネルギーへの関心は早く、2003年には、北海道に次いで全国で2番目につくられた市民風車「わんず」の立ち上げに参加しました。家族10人が一人10万円ずつ出資したこの経験は、農業とエネルギーを地域内で循環させる発想へつながります。2005年には有限会社白神バイオエネルギーを設立。将来は、農作業から出る廃棄物をバイオマスエネルギーに変え、農機具の燃料として使うことも構想しています。

技術も、人も、地域の中でつなぐ
風丸農場が循環させたいのは、資源だけではありません。農業は食料を生産する産業であると同時に、人と人をつなぎ、社会を豊かにする基盤だと考えています。2008年からは、食農体験や農家民泊、田畑オーナー制などを組み合わせた「みんなの田畑『みんたば』」を企画・運営。進路や家庭環境などに悩みを抱える学生を受け入れる取り組みや、企業向けの通年・オーダーメイド型農業体験も行っています。
機械化の知見も農場の中だけにとどめません。機械メーカーと共同で果樹園用機械の開発やマニュアルづくりに携わってきた経験を、近隣農家と共有する場として開催しているのが「青森りんご産業エキスポ」です。2026年は7月24日、25日の2日間にわたり開催され、約30社が出展。最新の農業機械や資材を眺めるだけでなく、「どこを改良できるか」「自分の園地や経営規模にどう導入するか」といった、生産者と開発者の具体的な対話が各ブースで生まれました。座談会「りんごと地域の未来を考える」には、りんご産業に関わる企業、組織、農業者が集まり、地域の未来をともに考えました。

DIAPASONC580_Fork105(通称:ピンコ)
原付の免許で公道を走ることができ、畑の収穫作業にも活用できる。普通免許の取得が難しい障がいのある人の農場への足としても使えるのではと期待している
「できることは何でも」が、農業の未来をつくる
生産、加工、機械化、エネルギー、農地整備、そして人の交流。風丸農場の取り組みは一見、別々の方向へ広がっているように見えます。しかし、いずれも「青森の農業を持続可能な産業にする」という一つの目標で結ばれています。
加工用途に合うりんごを計画的に育てる。機械が働きやすい園地をつくる。剪定枝を地域の燃料に変える。技術を周囲の農家と分かち合い、農業に関わる人を増やす。風丸農場が掲げる「できることは何でも対応する」という姿勢は、地域農業が抱える課題を一つずつ、次の可能性へ変えていきます。
自分たちが面白い、よいと思うことから、よいものづくりと強い関係を生み出す。その積み重ねが、未来の子どもたちへ農業をつなぐ力になっています。
基本情報
会社名:有限会社 風丸農場
所在地:青森県西津軽郡鰺ヶ沢町大字建石町大曲1-1
総栽培面積 :131.5ha(2024年)
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