ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社では国産レモンの振興を目指し、広島県豊田郡大崎上島町と2016年に包括協定を締結しました。今後の国産レモン生産振興を更に活性化していくためにも、需要に供給が追いつかない現状に自らも向き合い、レモン農家の方々が直面している高齢化や担い手不足などの課題を理解し、共に生産振興を進めていくことを目的に、2019年4月から自社農園でのレモン栽培を開始、180本の木を新植しました。

活動のきっかけや現在の農園の状況、地域との連携について、原料ビジネス推進部部長の土屋淳一さんにインタビューを行いました。

離島での農業への参入、地域との連携

まずは、御社が自社農園でレモン栽培に取り組み始めたきっかけについて教えてください。

ポッカコーポレーションはレモン果汁の製造販売を事業の原点とする会社で、2013年にサッポロ飲料との経営統合を経て、「ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社」として事業を開始して以降、将来成長を見据え、国産レモンの生産振興に目を向けるようになりました。上位方針として「H +ESG」を掲げていますが「H(Health)」はレモンそのものであると考えています。レモンは生活者の健康志向を背景に、コロナ禍であってもレモンの家庭内需要が高まるなど、市場に定着しつつあります。わたしたちの使命は、レモン全体の総需要を上げていくこと、それと共に日本のレモン栽培を維持・継承していくこと、それにより持続成長可能な事業を目指したいと考えています。

広島県大崎上島町のレモン畑

そうした考えの元、レモンの一大産地である広島県、地方自治体、地元JAと国産レモン生産振興を目的に連携協定を締結。2019年から広島県の大崎上島町で自社レモン栽培を開始し、地域農業の振興と供給体制の確立に向けた取り組みをスタートさせました。

農業に取り組むことに社内では初めは懐疑的な意見もありましたが、地域や果樹栽培が抱える課題を把握すること、企業がその課題に対してどのように向き合うべきか検討するうえでも、まずはとにかくチャレンジすることを決めました。結果的にこの6年間で、地方自治体や農業者とのネットワーク、果樹栽培に関わる様々な知見、課題など多くのことを知り得ることができました。

大崎上島レモン栽培連携協定について

大崎上島レモン栽培連携協定についてその内容を教えてください。

農家・地域社会・企業の連携によってレモン生産振興の継続を図っています。地域に根付くために現地の空き家を借りサテライトオフィスを設け企業の覚悟を示すとともに信頼の構築に努めてきました。また、特徴的な取組みとして、地元住民の成人男女ボランティア541名のご協力のもと、レモンを摂取し続けることにより得られる健康状態への効果を確認する5年間にわたる長期観察介入研究を行いました。日常的にレモン果汁を摂取することにより、血圧上昇の抑制が確認され、健康な状態の維持に繋がる可能性があることが示唆されました。また、レモンの健康成分について小学校で出前事業を行ったり、島内でメニューコンテストを実施するなどレモンの啓発活動を推進しています。農家・地域・企業で三位一体となり、こうした取り組みをいかに社会資源化していくかが重要だと考えています。

離島で農業に着手するには、流通やコストの面でリスクもあったかと思いますが。

ビジネス上のリスクはいくつか想定されましたが、元々大崎上島にはグローバルリーダー校である中高一貫校などの教育機会も整っていて、Iターン・Uターンの移住者が増えている地域であり、将来的に外部との連携が拡大する環境があると見込んでいました。広島県全体の方針として、ミカンからレモンへの転作が増加していて、移住者が新規就農でレモン栽培を始める方も多い。栽培を開始する前、私が1年半ほど、東京から通いで管理させてもらえる圃場で、地元JAの協力を得ながら栽培の指導を受けました。本格的な栽培がスタートしてからは、地域の農家さんと農業談義しつつ、アドバイスをいただいています。2019年から自社農園は50aの面積で栽培をスタートさせましたが、現在は契約農家も含めて約1ヘクタールで生産を行なっています。現在の収穫量は10t程度です。

安定した価格と需要の拡大で、安定した農業経営を

契約農家とはどのような関係を構築していますか。

価格の安定が生産者にとって何より重要であると考えています。生産者はどうしても市場の価格に左右されるので、現状はレモンの価格は上昇傾向にありますが、そうした中で価格を安定させること、また需要を上げ続けることが生産者にとっての安心材料になります。また、農地環境の整備も重要です。斜面での農作業は大変なので、自社圃場は元々は米を生産していた荒廃農地を借り受け、平場にレモンを新植しました。遠隔操作が可能な自動潅水システムを導入するなど、スマート農業の実証を進め、栽培管理の効率化と収量アップを目指しています。 島内に平場で条件の良い荒廃農地を見つけたら、当社で園地を無償で整備しています。これまで延べ1haほど整地しており、その圃場で新規就農を始める移住者の方に契約農家になってもらうなど地域と連携した活動をしています。

効率的な農業と、新天地での規模拡大

自社農地も含めて平場で栽培されていらっしゃるようですが、栽培の効率化についてどのような取り組みをされていますか。

自社農地も含めて平場で栽培し、栽培の効率化に取り組んでいます。大崎上島での取り組みや経験を活かし、第2ステップとして静岡県の磐田市でもレモンの栽培をスタートさせます。磐田市は大崎上島と比べると、圃場一区画の面積が大きく、更なる生産規模の拡大と効率化を目指していきます。

果樹農業全般に対する展望について

最後に、果樹農業に取り組まれてきて感じている課題や展望についてお聞かせください

「儲かる農業」を実現するのは本当に困難なことです。現状、いかに儲けるかは、個人や企業の工夫に委ねられているわけですが、農業だけで事業化できるモデルをどのように作ってガイドライン化していくか、が重要だと思っていますし検討していきたいです。また、一定の規模感を持って農業に取り組もうとすると、それなりの資本力も必要になります。1つの地域に複数の企業が連携して共通のビジョンを持ってコミットしていく、という形が作られていくと良いと思います。 

消費者が求めるものは年々変化しておりニーズが多様化しています。そんな中で消費者と生産者がつながり「作り手の顔が見える」ような今回のプロジェクトの中でも密着性を持った取り組みを地域と展開していきたいと考えています。

基本情報

会社名:ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社

本社所在地:〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄3-27-1
(東京本社) 〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿4-20-1

圃場所在地:広島県大島上島町

栽培品目:レモン

圃場面積/生産量:1ha/10t弱

<土屋 淳一氏プロフィール>

ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社 原料ビジネス推進部部長(2000年入社)